かつて、仙台の地に秋保電鉄という鉄道が走っていました。1914年の開業から1961年に廃止となるまでの47年間、長町と秋保温泉の間を名取川沿いに結んだ小さな私鉄です。

 

 「仙南交通秋保線'70s」は、その史実での廃止から10余年間に焦点を当て、或いは在り得たかもしれない“秋保電鉄の別の姿”について想像を巡らせたもので、いわば架空鉄道の一つです。制作にあたっては“郊外の鉄道線を走る路面電車”というコンセプトを主軸に据えつつ、作者が実際に触れてきた、また触れることが出来なかったそれに纏わる数多のものに対する表象を重ねました。

 

 秋保電鉄の廃止後10年という時期は、その沿線が山林の広がる丘陵地から仙台市都心部のベッドタウンとして都市圏の一角を担う住宅団地へと大きく変容を始めた頃に相当します。その時流の中で秋保電鉄の線路跡もまた国道のバイパスや市道へと姿を変え、電車が走った面影を消していきました。この仙台都市圏の黎明期とも言うべき時代を舞台として、作者の想像による鉄道風景を描いたのが当作品です。

 

 本ページの目的は歴史考察ではありません。考証に齟齬のある所が見られるかも知れませんが、ご笑覧頂ければ幸いです。